『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

Shiro SAGISU Music from“EVANGELION 3.0
★★★☆☆
唐突なヒールターン、「いいかオイ、ポカポカなんてねえんだよ!」と観客をアイアンフィンガーフロムヘルで急襲。と思っていたのだけれど……。
以下、ネタバレ。
わたくし、このエヴァ新劇場版は旧劇場版の修正を試みているのだと思っておりました。旧劇場版、いわゆる夏エヴァの過剰にエキセントリック中年で攻撃的なところ。映画館の観客を大写しにしてみたり、「庵野死ね」という書き込みを挿入したり、挙句にムギューと首絞めて「気持ち悪い……」でカーテン引いてみせたり。いやあれはあの時代の気分としてはリアルだったのだろうけれど、さすがに歳を取ったのよ、もうそういう気分ではないのよ、健全なエンタメやりますよ、プロレスしよ、な、プロレスしよ。それがエヴァ新劇場版の目指すところだと思っていたのです。だからこそ『序』ではミサトさんが「わたしたちも土日出社してるの」とシンジ君を宥めすかしたり、『破』ではレイが「ポカポカしたい」などと抜かしたりするのだと。

ただわたくし、この微温的な改変を諸手をあげてバンザイする気分にはなれませんでした。まだナイーブな僕様ちゃんだった頃に夏エヴァを見、てひどいダメージを食らった人間なものですから、「今更優しくされてハイそうですかと尻尾振れるかよ!おりはよう、おりはよう!」という屈折した怨念がガモガモと沸き起こってきてしまうのです。まーメンドくさい。

とは言え、この軟着陸路線は妥当と言えば妥当、実際おいらのようなオタ以外にも受けているのだから、まーええんちゃいますか。みたいな感情もあったのです。言うなれば現在の新日本プロレス、棚橋エンタメ路線に対する受容の仕方。ベビーフェースが勝利するハッピーエンドで愛してまーすと観客も大合唱。これで多くの人々が幸せになるのであれば、今更ストロングスタイル云々と腐すのも野暮天だよな……と。そう思っておりました。

ところが今回の『Q』です。正直、最初から最後まで口ポカーンでした。なにこの超展開……どうしちゃったの庵野せんせい、ポカポカエンタメプロレスするんじゃなかったん……。突然のヒールターンに受け身も取れずオロオロするばかり。

終わった後も喫茶店でギニャーと悶絶談義です。「庵野せんせいご乱心」「もしかマジメにエヴァを作り直すのに飽きたのか」「ヤマト2199やりたくなったとか」「いや、それよりモヨコと上手くいってないんじゃ……」と真剣な顔で話し合い。それより自分の人生を見つめ直せという話です。

しかし一緒に見た友人が、「いくらなんでもこれおかしくない?」と。『破』の時に流れた予告と今回はまるっきり繋がっていない。だいたいあの時の終わりは、エヴァソゲリオンがメルトダウンしそうなところに槍降ってきて急停止、カオル君降臨で「今度こそ君を幸せにしてみせる」とかなんとか。それで今回の『Q』展開じゃーバカの書いた脚本ですよと。たぶん次回は『破』の続きから始まり、綾波を助けることが出来たルートの話なんですよと。つまり再びポカポカプロレスにベビーターンするための布石ですよと。

あー言われてみれば確かに。以前から赤い海であるとか、ループものじゃないかという指摘はあったけれど、わたくしはそれ旧劇場版に繋がる世界なんだと思っていたのですね。そうじゃなくて、この新劇場版のシリーズ内でループもしくは分岐してるという設定なんだと。

大いにありうるよなーと思えるのは、スタッフも重なる『トップをねらえ2! 』にてやはり「○○が実は××でした!」という仕掛けを用意していたことです。そう思うと急速に腑に落ちることが多々あり、今回のトンデモ超組織とか、キャラクターの改変とか、ケツ拭く気ないから故の大振りなんだと。次回予告で流れたアシュラ男爵なんかフォローする気もないギャグちゃいますのと。とすれば完全にイッパイ食わされたわけであり、上で書いたようなわたくしの煩悶はいいカモと言う他ありません。

いや、ここまで書いてきても若干の不安も拭えず、ふつうに『Q』の設定のまま続いたらどうしよう……とも思うのですが。どちらにしろ次回公開されたらわたくしはまたいそいそと足を運んでしまうのです。く、悔しい、でも感じちゃう!(どうしようもない)