『ホーリーランド』#7 森恒二

ホーリーランド (7) (Jets comics (988))
★★★★☆
雑誌『ヤングアニマル』で一番続きが気になるのは、かつての切迫感は何処な『ベルセルク』ではなく、休載期間が長過ぎる『セスタス』でもなく、『ふたりエッチ』でも『ゆびさきミルクティー』でもなく、これ『ホーリーランド』であります。
イジメに遭っていたモヤシっ子がボクシングを習得し、自衛のため街で拳を振るう内にいつしか「ヤンキー狩り」と呼ばれ一目置かれるようになってゆく…。と書くとまるで「強く成りたい君(by 大槻ケンヂ)」の妄想漫画のようですが、その種の単純な成り上がりドラマではありません。
例えばこんなエピソード。主人公は街で、かつて自分のことを「キモーい」と嘲笑した女の子たちに出会います。「あんたヤンキー狩りって呼ばれてるんでしょ」「かっこいー」「イケてるじゃん」などと過去とは一転して浴びせられる賛辞の言葉。しかし彼は「イケてるってなんだ?ボクには意味が分からない…」と戸惑い、その場から逃げ出してしまうのです。
ダウナー人間がアッパー系へと移行せず、一貫してその出自に拘りもがき続ける。これが本作の魅力ではないかと思うのです。