漫画

安彦良和展からの連想、『THE ORIGIN』へのモヤモヤと歴史漫画での冴えについて

はじめに 冒頭から溢れ出る韜晦、その暗さ ヤマトを巡る面白挿話の数々、技巧と裏腹のぼやき 『THE ORIGIN』へのモヤモヤ、なぜ完全フィクション作品でこうなるのか 歴史漫画での筆力、不可逆だからこそ生じる実存 再び、富野監督との比較 歴史漫画に登場す…

『着せ恋』『青春ブタ野郎』『放浪息子』『スキップとローファー』他、ラブコメ雑考

はじめに 最近のアニメ凄いですね、という話 『着せ恋』のめちゃくちゃ可愛い問題 可愛ければ良いのか?『放浪息子』について 余談 美醜を超える祈り、『スキップとローファー』について 追記、12巻の救済について 雑談、現代ラブコメのありようあれこれ 正…

士郎正宗の世界展と、それによる記憶の旅

はじめに 士郎正宗の世界展 海野十三と日本SF おまけの与太 士郎正宗『攻殻機動隊』について 士郎正宗『アップルシード』について(ネタバレあり) ダン・シモンズ『ハイペリオンの没落』について(ネタバレあり) ダン・シモンズ『殺戮のチェスゲーム』につ…

『BLOOD ALONE』 高野真之

★★★☆☆ 売れない作家の青年とちょっぴりワガママな美少女。擬似親子関係にある二人の穏やかな日常。この漫画の師匠、源流天一郎、御先祖様万々歳はおそらく榛野なな恵『Papa told me』であろうと思います。しかしここには『Papa told me』の主義主張、「マイ…

『虹色のトロツキー』#1〜8 安彦良和

★★★★★ 舞台は昭和13年の満州。主人公のウムボルト君はモンゴル人と日本人の混血の少年。複雑な出生からアイデンとティティに悩み、理想を求め彷徨する…。そんな彼と一緒になって漫画もあっちへフラフラこっちへフラフラと迷走してゆき、お話としては破綻して…

『魔法先生ネギま!』#1〜16 赤松健

★★★★☆ 長い間…おれはこの『ネギま』って漫画が苦手だった…。「美少女がワンサカ31人!」って謳われても…どいつもこいつも量産型ジムって言うか…見分けがつかないって言うか…。それにハピマテ祭りとか外部の騒動もネガティブで…オタクの欲望を扱いてジャラジ…

『ソラニン』#1 浅野いにお

★★★☆☆ 生れてはみたけれど、大学は出たけれど、浮気なぼくらは相も変わらずモラモラと目的もなくクラゲのように漂うばかりで。一念発起して昔鳴らした楽器を手に取ってみたりもして。でもそんな砂糖菓子の弾丸がヒットチャートを駆け抜けるわけもなく。陽は…

『シグルイ』#1〜5 山口貴由

★★★★★ 面白過ぎる、面白過ぎるぜえええええええ!四肢が切り飛び腸が噴き出る剣劇がエクストリームなら、登場人物もエクストリーム。主人公の藤木源之助はクソ真面目な朴念仁かと見えて、只管に強さを追い求め己の「痛み」や「弱さ」を拒絶する言わば求道ロ…

『青い花』#1 志村貴子

★★★★☆ 凛として見えるが本当は泣き虫のふみちゃん。幼く見えるが実はしっかりもののあーちゃん。二人の女子高生を中心にした友情あり恋愛ありの物語。 キャラクター造形が素晴らしい。ふみちゃんのカミングアウトを受けて、あーちゃんはひどく真面目に「応援…

『エマ』#1〜4 森薫

★★★★☆ ビクトリア朝で階級差恋愛で萌えーな漫画。ヒロインのエマさんは無口で控えめで照れ屋で献身的でオマケに眼鏡で美人のメイドさん、という確信犯にも程がある造型。そんなエマさんとクリスタルパレスでデエトしたりするのだから堪りません。これに萌え…

『下弦の月』#1〜3 矢沢あい

★★★☆☆ 沙絵たん(11歳)は友達想いな眼鏡っ子で、必要にして十分な萌えキャラであり、たいへん素晴らしいと思いました。ギター弾きのアンチャンや女子コーセーがあの世へ行こうが還ろうが正直どうでもよろしいので、それよか沙絵たんの揺れる恋ゴコロをじっ…

『恋風』#1〜4 吉田基已

★★★☆☆ イブニングで連載中のガチンコ妹萌え漫画。「12人の妹に囲まれてうわわーい」みたいな夢☆幻想とは異なる、生臭い・70年代・四畳半・神田川・洗い髪が芯まで冷えて・どこまでもシミたれた物語。髭面で殊更にムサ苦しく描かれる兄の遣ること成すこと、ど…

『のだめカンタービレ』#1〜9 二ノ宮知子

★★★★☆ オレ様至上主義の千秋(ピアノ科・でも本当は指揮者志望)、不思議ちゃんの野田恵(ピアノ科)、自称「天才ロッカー」の峰(ヴァイオリン科)、嫉妬深いが気のいいゲイの真澄ちゃん(打楽器科)、音大を舞台に学科も個性もバラバラなメンツが繰り広げ…

『はだしのゲン』#1〜10 中沢啓治

★★★★☆ オース、メース、サース。まとめて一気読みしてやったわい。1〜7巻までは怒りあり涙あり笑いありで(時折、ドン引きするぐらい陰惨な、ザ・ダークネスなお話もありますが)大いに楽しめたのですが、以降は蛇足の感がアリアリ。 以下、ネタバレ。台詞な…

『放浪息子』#1〜2 志村貴子

★★★★☆ オンナノコになりたい♂シュウちゃんとオトコノコになりたい♀ヨシノくん。互いの嗜好の発見から、やがて二人は女装・男装してデエトする奇妙な関係に…。 同じ作者の『敷居の住人』はモラモラ沈滞ムードが苦手だったのですが、こちらは年齢が下がって(…

『11人いる!』 萩尾望都

★★★★☆ その昔、出崎哲監督による映画版を見て手に汗握ったものですが、オチを知った今に原作の漫画を読んでも余り楽しめないのでは…と思っていたのですが。どーしてどーして、やっぱりたいへん面白い。 以下、ネタバレ。「エリート大学の最終選考は、受験者1…

『月の夜 星の朝』#1〜8 本田恵子

★★☆☆☆ ガキンチョ時代に結婚を誓い合った二人が再会し、くっついたり離れたり、離れたりくっついたりを延々と。完全にくっついてしまうと物語は終わってしまうので、行く手にはあの手この手の障害が立ち塞がります。転校したり編入したりアメリカ留学したり…

『海の天辺』#1〜4 くらもちふさこ

★★★☆☆ 中学生の女の子が理科の教師にスキスキスー、アタックあたっくアタタックを繰り返すお話。 以下、ネタバレ。最終巻に至って物語は恋バナを逸脱し、謀略渦巻くコンゲーム(大袈裟)の様相を呈します。一体どこに着地するのかとハラハラドキドキしたもの…

『ハチミツとクローバー』#6 羽海野チカ

★★★★☆ クールなプレイボーイ(死語)のイメージだった野宮が急速に気遣いや人情味を見せ始め、これはもう言うまでもなく山田さんとくっつけるための布石、と頭では理解しながらも心は受け入れ難く、「うわーそんなカップリングは嫌だー山田さんはもっと素敵…

『Kiss+πr2』 くらもちふさこ

★★★☆☆ 突然に転がり込んできた幸運による人間関係の変化、ささやかな交感、すれ違い―地味だけれど繊細で丁寧な筆致。ただ、気になったのがファミコン好きな眼鏡のオタク君に対する扱い。主人公は彼を「いいやつ」と呼ぶのですが、それは好感ではなく、「人畜…

『天使なんかじゃない―完全版』#1〜3 矢沢あい

★★★★☆ 矢沢あい先生と言うと、もっとアッパー・コジャレ系のイメージを持っていたのですが、これバリバリに乙女チックな内容でビックリ。ちょっぴり突っ張っていて、でも雨の日に仔猫を拾ったり、実は繊細で優しいアイツにドッキンコ。恋愛だけじゃない、イ…

『正しい恋愛のススメ』#1〜5 一条ゆかり

★★★☆☆ 勉強も運動もそれなりに。ルックスだって平均以上、恋人もいる。でも何処か退屈で物足りない。そんな毎日を送っていた高校生、竹田博明は友人の誘いで出張ホストのバイトを始める。やがて知り合った年上の豪奢な美人に惹かれ、仕事の領分を忘れ夢中に…

『ハチミツとクローバー』#1〜5 羽海野チカ

★★★★☆ 美大生男女5人の可笑しく時に切ない青春模様。「切ない」を一手に引き受けるのが山田さん。酒屋の娘でカカト落しが必殺技で、茶髪代官山メガネ君(男キャラの名前など知りませぬ)のことが好きで、けれども彼には年上の憧れの人がいて、報われぬ想いと…

『ママレード・ボーイ』#1〜8 吉住渉

★★★☆☆ 突然の夫婦交換宣言により元パパ・ママと新パパ・ママが同居することに。ぶっちゃけありえない!でも新パパ・ママの息子は凛々しくて笑顔が素敵なハンサム君。彼と一つ屋根の下で暮らすなんてドッキドキ。おまけに昔好きだったテニス部のイケメン君と…

『ラヴァーズ・キス』#1〜2 吉田秋生

★★★★☆ メインのふたり以外は全員が同性に恋愛感情を持っていて。当初は遠景として存在していた彼・彼女達の想いが、次第に明らかになってゆく構成の妙。最初のカプールの恋バナなど鼻クソほじりながら読んでいたのですが、途中からすっかり夢中になって、最…

『一緒に歩こう』 谷川史子

★★★☆☆ ぷにぷにした幼稚園児は最高だなあと思いました。

『ミントな僕ら』#1〜6 吉住渉

★★★☆☆ 双子の姉弟、まりあとのえる。それまで何をするのも一緒だったのに、他校の体育教師を好きになり、転校してしまうまりあ。姉を追いかけ、のえるは「女の子」として学校へ潜入することに…。 この漫画が面白いのは序盤も序盤、女装したのえるが美少女と…

『ウルトラマニアック』#1〜4 吉住渉

★★★☆☆ 少女漫画にうるさいひと(♂)に「チミも偶には違う文化圏のものを摂取しなさい」と説教され、「試しにこれでも読みたまえ」と渡されました。 読んでみました。仁菜タンが可愛い。仁菜タンが萌える。親友の亜由と同じイケメン君(男性キャラの名前など…

『ホーリーランド』#7 森恒二

★★★★☆ 雑誌『ヤングアニマル』で一番続きが気になるのは、かつての切迫感は何処な『ベルセルク』ではなく、休載期間が長過ぎる『セスタス』でもなく、『ふたりエッチ』でも『ゆびさきミルクティー』でもなく、これ『ホーリーランド』であります。 イジメに遭…

『おひっこし』 竹易てあし

★★★★☆ 沙村広明が変名で季刊『アフタヌーン』に連載したラブコメ?漫画。『君の名は』状態、あるいは無限ループに陥りつつあるように思える最近の『無限の住人』よりも、破天荒なノリ一発のこちらの方が読んでいて楽しめます。「時代遅れのバンドをコピーし…