『皇国の守護者』#1〜9 佐藤大輔

★★★★☆ 漫画5巻のラストはいわゆる「男坂をのぼりつづけるぜ!」なのですが、投げっぱなしジャーマンには見えない、むしろ堂々たる幕引きにさえ感じられます。しかしもっと末永く楽しみたかった、続きが気になるのが人情というもの。それじゃー原作も読んじゃ…

『虐殺器官』 伊藤計劃

★★★★☆ 今よりほんの少しだけ未来。先進国は個人認証の徹底と情報管理によりテロの抑止に成功していた。一方で興進国では内戦と紛争が頻発していた。騒乱の都度に扇動者として囁かれる謎の人物、ジョン・ポ−ル。アメリカ情報軍に所属するクラヴィス・シェパー…

『ノモンハン』 辻政信

★★★☆☆ 『虹色のトロツキー』からの流れで、ノモンハン事件関連の書籍を読んでいます。これは当時、関東軍参謀を務めていた辻政信の手記です。辻政信と言えばまー大変評判の悪い人で、陸大恩賜軍刀組のエリートで「作戦の神様」とも称されながら、実際は無謀…

『馬鹿★テキサス』 ベン・レーダー

★★☆☆☆ 以下、ネタバレ。

『ポップ1280』 ジム・トンプスン

★★★★☆ 以下、ネタバレ。 人口1280人の小さな田舎町、ポッツヴィル。この町の保安官ニックはおよそ「法の番人」とは程遠い人物。給料に見合う仕事は何一つせず、むしろそんな人間であるからこそ保安官に選ばれたのだと嘯く。ところがポッツヴィルの住民はニッ…

『コレクター(上・下)』 ジョン・ファウルズ

★★★☆☆ 地味で冴えない事務員フレッドはフットボール賭博で大金を得たことから、心の奥底に抱えてきた密かな願望を実行に移す。それは一方的な憧憬の対象であった女学生のミランダを誘拐、監禁し二人きりの生活を営むことだった…。 以下、ネタバレ。

『プロレス 影の仕掛人』 ミスター高橋

★★★☆☆ 『流血の魔術』で話題を呼んだミスター高橋によるプロレス内幕もの。馬場さんのことは「日本プロレス界の良識」と絶賛する一方で、猪木は「プロレスラーとしては天才だが、平気で他人を裏切る」とたいへん批判的。さもありなんと思わせるのがアントン…

『滅びの笛』 西村寿行

★★★☆☆ クマ笹の一斉開花により鼠が大量発生。自然を蹂躙する人間どもに狂気の奔流となって襲い掛かる!薬品散布も自衛隊による火炎放射攻撃も20億匹に及ぶネズ公の群れには微々たるもので、人間どもは誰も彼も抵抗むなしく食い殺される一方的な展開。オマケ…

『最後の審判』 リチャード・ノース・パタースン

★★★★☆ 『罪の段階』『子供の眼』に登場し、特に後者では正ヒロインのテリ以上に魅力的だったキャロライン。今作では遂に主人公となり、姪の殺人容疑を晴らすため弁護士として腕を振るいます。合間にキャロラインの過去の体験、有り体に言ってしまえば一夏の…

『誘惑の湖』 リンダ・ハワード

★★☆☆☆ 作者のリンダ・ハワードさんはハーレクインのみならずロマンス小説の書き手として知られている方(らしい)。冷やかしでなくかなり本気で、もしかこれ未だかつてないトキメキ☆体験が出来るかもと読んでみたのですが。 まー要は男女がくっつくまでを如…

『神の火(上・下)』 高村薫

★★★☆☆ ダンディなおじさま、ヤクザなアニキ、病気がちな美少年、と各種取り揃えて全方位対応の謀略やおい小説。 以下、ネタバレ。

『マリア様がみてる 特別でないただの一日』 今野緒雪

★★☆☆☆ 祐巳と祥子さまが姉妹の契りを結んでから一年が経ち、再び学園祭の季節がやって参りました。今年の山百合会の出し物は『とりかえばや物語』です。前準備に大忙し。てんやわんや。あれやこれや。 イベント消化の合間に祐巳X瞳子、あるいは祐巳X可南子…

『七王国の玉座(上・下)』 ジョージ・R.R. マーティン

★★★★☆ ハードカバー上下巻二段組、併せて900ページ近く。しかもこれがまだシリーズ全体では序盤に過ぎないというのだから、まー気の長いお話です。登場人物もやたらと膨大で、巻末の人名目録を捲っては「えーこいつが誰であいつがおれで」と確認必須。個人的…

『極大射程(上・下)』 スティーヴン・ハンター

★★★★☆ ベトナム戦争で名を馳せた伝説のスナイパー、ボブ・スワガー。今は人里離れ隠遁生活を送る彼の元に、銃器メーカーからテスト射撃の依頼が舞い込む。だがその背後には大統領暗殺計画の陰謀が隠されていた…。 以下、ネタバレ

『リプレイ』 ケン・グリムウッド

★★★☆☆ もしも人生をやり直すことが出来たなら―。 以下、ネタバレ。

『赤毛のアン』 ルーシー・モード・モンゴメリ

★★★★★ アニメなどで断片的に触れたことはあったものの、原作をキチンと読むのは初めて。おお、笑わないで。私は赤毛で、雀斑だらけで、やせていて、みっともないのです。それにしてもこれたいへんな萌え小説じゃーないですか。何がってマリラが半端ない萌え…

『李歐』 高村薫

★★★☆☆ 以下、ネタバレ。

『奇術師』 クリストファー・プリースト

★★★☆☆ 新聞記者アンドルーは、常日頃から「いるはずもない双子の存在」を感じてきた。取材先で出会った女性ケイトから、それは貴方と私の先祖の確執が関係していると告げられる。ボーデンとエンジャ、アンドルーとケイトにとってそれぞれの曽祖父に当たり、…

『子供の眼(上・下)』 リチャード・ノース・パタースン

★★★★☆ 『ラスコの死角』『罪の段階』と弁護士として活躍してきたクリスが、本作では一転して殺人犯として逮捕される。しかもクリスは法廷での証言を拒否。彼の恋人、息子、弁護人の誰もが無罪を確信できぬまま審理は進むことに…。 以下、ネタバレ。

『蹴りたい田中』 田中啓文

★★★☆☆ 短編集。デオキシリボ・スケさんカクさんを従えた水戸黄門の珍道中『地獄八景獣人戯』、不老不死の能力と引き替えに悪臭を放つ肉体となったスタアの悲劇『怨臭の彼方に』、父親が行方不明となった惑星へ、森田健作を模した人工知能と供に旅をする『吐…

『ワイオミングの惨劇』 トレヴェニアン

★★★☆☆ しなびた鉱山町を暴力で牛耳ろうとする脱獄囚の三人組。耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、恐怖におののく町民たちに成り代わり、流れ者の若人が父親譲りの巨大な散弾銃を片手に立ち向かう! というお話では、全然まったくありませぬ。主人公はおよそマ…

『目撃』 ポール・リンゼイ

★★☆☆☆ 盗聴や指紋照合など具体的な捜査過程は興味深く読めるのですが、組織内部の悪玉=エリート・デスクワーク中心・軟弱者vs善玉=叩き上げ・現場主義・タフマンという図式は(敢えて戯画化して描いているにしても)余りに単純過ぎやしませんかと。しかも…

『世界は密室でできている。』 舞城王太郎

★★★☆☆ きっと血みどろ残虐バイオレンスや口ポカーンなメタメタ落ちがあるんやろう、酷い目に遭うんやぞ!と身構えて読んだのですが。意外や意外、オトコノコ・オンナノコが悩んでブツかって大きくなる真っ当な(人はバリバリ死ぬのですが)成長物語に仕上が…

『高い城の男』 フィリップ・K・ディック

★★★☆☆ 第二次大戦で枢軸国側が勝利し、日本とナチス・ドイツが覇を競う「もしも」の世界。敗戦国のアメリカ人の皆さんが内心は忸怩たるものを抱えながらも、戦勝国の日本人にヘーコラと媚びへつらう描写はたいへん悦楽至極で、いいぞもっとやれと思います。…

『総統の子ら』 皆川博子

★★★☆☆ ナチス・ドイツの最高エリート養成機関、ナポラ。祖国への愛と理想に燃え、此処に集った少年たちの物語。厳しくも充実した訓練生活の中、芽生える対立、友情、そして同性同士の秘め事…。叙情的な雰囲気は開戦から一転、凄惨な戦闘描写がこれでもかと続…

『戦略拠点32098 楽園』 長谷敏司

★★☆☆☆ SFマガジンに掲載された短編『地には豊穣』がたいへん素晴らしく、デビュー作はどうなんだろうと期待を胸に手に取ってみたのですが。過度に感傷的で、何より地の文で登場人物の心情を語り過ぎな気がいたします。「戦うことしか知らない兵士とアルジャ…

『ルー・サンクション』 トレヴェニアン

★★★☆☆ 登山家にして大学教授、天才的美術鑑定家ジョナサン・ヘムロックが活躍するシリーズ二作目。困難を極める登頂、しかも信頼すべきチームの中に抹殺すべきスパイがいる…ハードな状況設定からして手に汗握った一作目『アイガー・サンクション』に比べると…

『クリスマス・テロル―invisible×inventor』 佐藤友哉

★★☆☆☆ 以下、ネタバレ(なのか?) ボックンを無視するな!動くな、死ね、甦れ!というお話。しかしこれは「書くことの孤独と不安」などと言う大層なことではなく、「テキスト系サイトの管理人がアクセス数の少なさに逆ギレして閉鎖宣言」程度のものではない…

『クリプトノミコン』#1〜4 ニール・スティーヴンスン

★★★☆☆ SFとも歴史ミステリとも冒険小説ともつかぬ、何でもアリの闇鍋ごった煮ジャンク・フィクション。無闇やたらと詰め込まれた蘊蓄、小ネタ、ギャグ、バカ話がとにかく楽しくて。例えば暗号解読の精度と射精回数の関係を数式やらグラフを用いて延々と大マ…

『秘曲笑傲江湖』#1 金庸

★★★★☆ 金庸の作品を読むのは初めてなのですが、滅法面白く「何故これまで手に取らなかったのか」と後悔する程に。英雄・豪傑・美少女がわんさか登場し、どいつもこいつも(美少女を含めて)超人的な体術の使い手。秘孔を突いて動きを止め、椅子に座ったまま…