『ルー・サンクション』 トレヴェニアン

ルー・サンクション (河出文庫)
★★★☆☆
登山家にして大学教授、天才的美術鑑定家ジョナサン・ヘムロックが活躍するシリーズ二作目。困難を極める登頂、しかも信頼すべきチームの中に抹殺すべきスパイがいる…ハードな状況設定からして手に汗握った一作目『アイガー・サンクション』に比べると、(ほとんど映画『アイズ・ワイド・シャット』みたいな)秘密の社交倶楽部に潜入を試みる本作は随分と俗っぽく、危機感も薄く感じられてしまいます。捻りの聞いた台詞の応酬や、後の『シブミ』(傑作!)に繋がる人物の登場にはニヤリとするものの、全体的にこじんまりとした印象。
また、年下の娘さんとのロマンスにページの大半が割かれるのですが、彼女との交情よりもビアンの美術評論家との友情が魅力的で、むしろこちらに力点を置いて欲しかったナーと思いました。