『総統の子ら』 皆川博子

総統の子ら
★★★☆☆
ナチス・ドイツの最高エリート養成機関、ナポラ。祖国への愛と理想に燃え、此処に集った少年たちの物語。厳しくも充実した訓練生活の中、芽生える対立、友情、そして同性同士の秘め事…。叙情的な雰囲気は開戦から一転、凄惨な戦闘描写がこれでもかと続き、最終的に「ナチスだけがそんなに悪いのか?」「勝者の語る歴史が真実なのか?」という疑問を真正面からブチ上げます。上下二段組で600ページ余、読み応えは充分。
しかし「SS萌えー」などと限りなく低俗な姿勢で臨んだ読者としては、(政治的テーゼよりも)前半のお耽美な学園パートをもっと拡張して頂きたかったなーと思ってしまうのでした。あと善人とも悪人ともつかぬマックスや、美少女ユーリアといった曰くありげな登場人物達が、さしたる見せ場もなく退場してしまうのもチト残念なところ。