『奇術師』 クリストファー・プリースト

〈プラチナファンタジイ〉 奇術師 (ハヤカワ文庫 FT)
★★★☆☆
新聞記者アンドルーは、常日頃から「いるはずもない双子の存在」を感じてきた。取材先で出会った女性ケイトから、それは貴方と私の先祖の確執が関係していると告げられる。ボーデンとエンジャ、アンドルーとケイトにとってそれぞれの曽祖父に当たり、ともに「瞬間移動」のイリュージョンで名声を競った二人の奇術師。およそ百年前に生きた彼等が現代へ如何なる影響を与えていると言うのか…。
以下、ネタバレ。
お話はボーデンとエンジャが残した手記をアンドルーが読み解く、という形式で進みます。二つの文献は互いの欠けた所を補うようでいて、齟齬や明らかな矛盾が存在し、どちらが本当のことを述べているのか判然としません。(あるいはどちらも真実を語っていない。)更にニコラ・テスラが登場する辺りから、物語は一気に幻想的な、あるいはぶっ飛んだ方向へ向かい始めます。ここに至り明かされる「瞬間移動」のタネは、掟破りにも「実は双子でした!」と「本当に瞬間移動してました!」というもの。合理的なトリックを期待していると腰を抜かします。
しかし終章の『蝿男の恐怖』みたいなオチはどうなんでしょう。「いるはずもない双子の存在」を含め、明確に説明するより「全ては曖昧模糊な藪の中」とした方が宜しかったのでは…と。
ちなみにこれ『メメント』のクリストファー・ノーラン監督で映画化されるとのこと。ジュード・ロウ×ガイ・ピアースって組み合わせは一部のやおいな人に受けそうですね。ああ、それはオレのことですか。オレのことですか?