『最後の審判』 リチャード・ノース・パタースン

最後の審判
★★★★☆
『罪の段階』『子供の眼』に登場し、特に後者では正ヒロインのテリ以上に魅力的だったキャロライン。今作では遂に主人公となり、姪の殺人容疑を晴らすため弁護士として腕を振るいます。合間にキャロラインの過去の体験、有り体に言ってしまえば一夏のロマンスが語られるのですが、このエピソードが秀逸。相手役を務めるスコットはどこか影のある男性。世間に背を向け、恋人のキャロラインに対しても心の奥底にある「何か」を明かそうとしません。これで「何か」の正体が「過去の恋の痛手」とか「不治の病」とかだったら興醒めですが、用意された答えは彼が他人を避けるのも無理はないと十二分に納得させられるもの。パタースンはこうした「秘密」の作り方と開示の手際が抜群に上手い作家だと改めて感じ入ります。もはやリーガル・サスペンスでも何でもない気もしますが、ノー問題ですよ、ええ、ええ。