『高い城の男』 フィリップ・K・ディック

高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)
★★★☆☆
第二次大戦で枢軸国側が勝利し、日本とナチス・ドイツが覇を競う「もしも」の世界。敗戦国のアメリカ人の皆さんが内心は忸怩たるものを抱えながらも、戦勝国の日本人にヘーコラと媚びへつらう描写はたいへん悦楽至極で、いいぞもっとやれと思います。しかしこれ実のところ火星人と金星人、あるいはゼントラーディとメルトランディが支配する地球…という設定でも成り立つお話で、歴史改変ものとしての醍醐味*1は薄め。また、作中に登場する小説*2が物語世界を揺るがすかに見えて、単なる小道具の一つにしか機能しないのもチト残念なところ。

*1:ディック先生にそんなものを望むこと自体が間違いかもしれませんが。

*2:「もしも大戦で連合国側が勝利していたら…」というこの世界での歴史改変小説。