『ジョゼと虎と魚たち』

ジョゼと虎と魚たち(通常版) [DVD]
★★★★☆
以下、ネタバレ。
ブッキーも池脇千鶴も、聖人君子でも天使でもなく、ごくふつーの人間です。それなりにヤらしくて、それなりに計算高かったり駆け引きもする。主役級の二人だけではなく、周囲の人物も同様で、平面的な善玉や悪玉は登場しません。
例えば「こわれもの」と言ったばーちゃんも「身障者のくせに」と罵った上野樹里も、別に悪人ではない。ばーちゃんはばーちゃんなりに池脇千鶴を守ってきたことが伝わってくるし、上野樹里もビンタ合戦や商店街での邂逅時に肝っ玉や繊細さを覗かせ、単なる「お嬢様」や「憎まれ役」という扱いで終わらない。それ故に彼・彼女がお話のための駒ではなく(本当は駒なのだけれど)、ちゃんと多面性のある人間として見ることが出来ます。何より「恋する二人vs無理解な世間」という安易な構図に落とし込まないことに好感。
だから池脇千鶴に興味を持つ一方で、セフレのねーやんや上野樹里とも関係する、アッパーなブッキーのキャラクター造形は全く持って正しい。正しいのですが、鑑賞者である自分からすると余りにも遠い存在です。強いて言えば、嫌がらせにアダルトビデオを無理矢理押し付ける輩がいたでしょう、あれがオレです。いや違うな、「胸もませてー」言いよるロリコンの兄ちゃん、あれがオレです。それが言いたかった、それだけです。