『リンダリンダリンダ』
★★★★★
「女子高生」が「学園祭」で「ブルーハーツ」を演奏する!一部のオッサンの欲望をガッチリと鷲掴みする企画で、わたくしもオッサンの一人として存分に満喫、興奮させて頂きました。
この映画が優れているのは、あざとい設定とは裏腹に「スポ根文系部活もの」のお約束から大きく逸脱しているところです。「倒すべきライバル」や「競技を勝ち抜くことの興奮」といったものは存在せず、ただ淡々と日常が綴られてゆきます。香椎由宇先生の「こんなことに大した意味なんてないよ」という台詞が象徴するように、『バンドやろうぜ!』的な暑苦しさ、押し付けがましさとは縁遠い物語です。
だからと言って、決して「醒め切った」映画というわけではありません。成り行きでバンドを結成したものの、練習を重ねるうちに皆が次第に熱を帯びてゆく…こうした過程が作為を感じさせることなく(それこそが優れた作為なわけですが)ごく自然に描かれています。
斯様な創作姿勢によって、この作品はたいへん優れたオッサン向けの「萌え」映画として機能しています。何故ならくたびれたオッサンにとって若者が激しく葛藤したり、あるいは勝利に歓喜する姿は疲労感しか呼ばないからです。それより他愛もない、しかし最早手の届くことのない日常、学園生活が繰り返されるさまこそが望ましく眩しいものに感じられるからです。例えば前田亜季ら一行が夜の校舎に忍び込み、静かに練習するつもりが堪え切れず笑い転げるくだりなど、見ているコチラの頬は終始緩みっぱなしです。股間は滾りっぱなしです。最悪です。