『秒速5センチメートル』

秒速5センチメートル 特別限定生産版 DVD-BOX
★★★★☆
以下、ネタバレ。
この映画と対照的な作品に細田守監督の『時をかける少女』があると思います。あちらはまず一本のお話として良く出来ていて、その上で語られる思想も「過去に拘泥することなく一度しかない今を生きよう。それが未来に繋がるのさ」というごく真っ当なものでした。翻ってこちら秒速おセンチメートルは、ありもしない過去を捏造し、「初恋の幻影に浸ってメソメソしよう。行こうぜ現実の向こう側!」というビビってたじろぐほど後ろ向きな内容です。
このような物語、まー褒められたものでないとは思います。キモいよカユいよとおっしゃる方がいるのも当然でしょう。しかし大きな声では言えないけれど、わたくしは嫌いじゃーないのです。むしろいつでもウエルカムと思っておるのです。何故ならば、新海先生の美意識とリリシズムに満ち溢れたザ・ワールド、平たく言って童貞男子の理想郷はおいどんの理想教でもあるからなのです。
雪に閉ざされた北国にて、宮崎あおいタソからお手製の弁当を振舞われたい。別れ際に何の根拠もなく「○○君はこの先も大丈夫だよ」と肯定されたい。あるいはピーカンの南国にて、長澤まさみ先生に一方的に想いを寄せられたい。挙句に「お願いだからもう優しくしないで」と泣きつかれ困惑したい。そういう「欲望」はわたくしの中にもある…直下型はある…口に出して言うには余りにアレ過ぎるけれども…!
世間的には、こうした欲望はこじらせる前に「小僧、ソープへ行け」と言われるのがオチです。しかしそんなプレッシャーなんぞどこ吹く風、新海先生は「オレはこれが好きなんだって!年齢なんか関係ないって!やってやるって!」とシャウトしておるわけです。この迸る情熱、本気と書いてマジ、フルスイングには冗談抜きで感動の念を覚えます。お前、男の中の男だよ!と思います。
「スメルで一杯にしてやる」と言いながら映画館での上映をスルーしてしまいましたが、次回は公開と同時に駆けつけたいと思います。そん時はよう、祭り(カーニバル)の始まりだぜぇ…!ギリビキ。