『オフシーズン』 ジャック・ケッチャム

オフシーズン (扶桑社ミステリー)
★★★★☆
避暑地を訪れた男女6人恋物語に食人族が襲い掛かる。吹き荒れる暴力の嵐。力と技の風車が回る!切断・解体・火炙り!ヴァー!
以下、ネタバレ。
如何にもありがちな登場人物(勝気な姉と気弱な妹、ベトナム帰りのタフマンと物書きのモヤシっ子など)が悉く当初のイメージを裏切る行動を取り、それでも報われずに凄惨な末路を辿る。容赦無さ過ぎでたいへん素晴らしいです。出版当時は「不穏当な表現」とラストの改訂を要求されたそうで、その経緯を語る作者あとがきが憤懣やる方なしという感じでまた面白い。

彼は生き残るべきだ、というのだ。読者は彼が生きのびてほしがるからだ、なのだそうだ。生きのびてほしがる?そりゃあ生きのびてほしがるだろう。
(中略)
だが、読者にへつらってどうする?作品を成立させるためには、○○○*1は死ぬしかないのだ。譲れなかった。テーマを考えても、劇的効果を考えても、○○○の死は不可欠だった。なにしろ、この小説はそれを表現しているのだ。人生とはそういうものだ、世界とはそういうものだということを。

確かに、もっともな意見です。甘ちょろい救済を付け加えたら、この物語は台無しになったことでしょう。しかし驚くのは、食人一家というトンデモ設定が実際の事件を元にしていることです。「塩漬けにされた人間の肉」って…ンガング。

*1:念のために伏字。