『キング・コング』

キング・コング プレミアム・エディション [DVD]
★★★☆☆
「有史以前の古代生物」であるとか、「前人未踏の秘境」であるとか、あるいは「ストロングスタイル」といった言葉が真実味を獲得することの極めて困難なこの御時世に、キング・コングをど真ん中にカムバックさせてやろうという作り手の意気や良しと思います。映像の迫真性、細部に至る作り込みはビビってたじろぐ程で、ことに髑髏島での3WAYマッチなど口はアングリ、頭空っぽにして銀幕に展開する格闘絵巻をただただ見詰めるのです。
一方でお話は残念ながら驚きに乏しく、新鮮味とは縁遠いものです。それと言うのも物語の中核を成すナオミ・ワッツとコングの関係が旧態然としたものだからです。彼女と彼の間柄は、これまでにも数多繰り広げられてきた「美女と野獣」という定番の図式に過ぎません。33年のオリジナルに比べれば現代的な解釈が施されているとは言え、最後まで「人間とモンスター」の境界を越えることはないのです。
我々が見たいのはその先にある、一線を越えた光景なのです。例えば『ガメラ3』において前田愛にゃんが「熱いよイリス…」と呟いた瞬間のように。客観的に見れば『ガメラ3』は出来の悪い映画でしたが、この時だけは『キング・コング』にはない昂奮がフィルムに宿っておりました。それは「二人で夕焼けを眺めてマッタリ」であるとか、「アイスリンクであっはっはー」などという微温的なイベントでは決して味わえないものです。三歩譲って老若男女が見るメジャー映画にハードコアな姿勢を望むのは酷だとしても、せめてヒロインをナオミ・ワッツではなくダコタ・ファニングで撮るぐらいの冒険は敢行して頂きたかったところです。