『クライング・フィスト』

クライング・フィスト 泣拳 デラックス・コレクターズ・エディション [DVD]
★★★☆☆
殴られ屋として生計を立ててきたオッサンと、喧嘩やらカツアゲに明け暮れてきた不良青年。境遇は違えど共に「クソったれな自分と決別したい」と願う二人が、ボクシングを通して人生の再起を賭ける。
うーむ。決定的に駄目な映画だとは思わないのですが。どうにもボクシングの見せ方に問題を感じてしまいます。と言うのもこれ試合の場面になるとコマ落しやらカットを割ったりと編集過多で、「あーそんな表面上の見栄えを繕うよりも、誤魔化さずそのまんま見せてくれた方がナンボか良いのにー」と思うことが度々あるのです。たとえブサイクで下手っピな素人の殴り合いでも、必要にして十分なお話があれば脳内で補正をかけ、エキサイト・マッチとして熱狂することができるのですから。こういった映像的作為が、折角の浪花節でド根性な物語から魅力を削いでしまっているように感じます。勿体ねえことです。


蛇足:
本編の前に『初恋』の予告編がありました。三億円強奪事件の犯人は宮崎あおいタンだった!というお話です。スクリーンに映るのは白バイ警官の(それにしてはあまりに華奢な)背中姿。ヘルメットを取るとそこからハラハラと黒い長髪が零れ落ちて…と嗚呼、作り手はこの絵が撮りたくて堪らなかったんだろうなあと。正直、こういうの自分だって嫌いじゃーありません。いやむしろ好きですよ。控え目に言ってむしゃぶりつきたい!と思いましたよ。でも同時にすごく恥ずかしかったんですよ。なんちゅうかこれ『雲のむこう』で南里侑香宮沢賢治を朗読させるのと大差ないオッサンの妄想ではないかと。何よりあおいタンにこういう幻想を背負わせるのはいい加減ヤメませんかと。素晴らしい女優さんなのだから、もっと毛色の違う作品に出て、様々な役を演じて欲しいと思うのです。ファンの一人として。そうだなー例えばあだち充原作映画のヒロインとかどうかな。かな。