『ただ、君を愛してる』

★★★☆☆
諸君らが愛してくれた宮崎あおいは死んだ！では今となってこのような映画を見ることに何の意味があるのだろうか？意味なんてない…敗北主義者と言われてもいい…見たかった…ただそれだけ…うぐぅ。
以下、ネタバレ。
この映画の内容はぶっちゃけエロゲー、それも泣きゲーと呼ばれるものに極めて近いと思います。特殊な生い立ちが隠されたヒロイン。徹底的に鈍感で「いいひと」な男性主人公。後者がニブちんのボクちゃんなのは重要です。何故ならヒロインの秘密、そしてそこから発生する問題を早期に察してしまうと、彼女の精神的葛藤を美味しく頂くことが不可能になってしまうからです。もはや取り返しがつかない、決定的に手遅れな状態になってから問題を発見したい。そうすれば主人公と観客であるわたくしは一緒になって「○○ちんてば健気な娘よ喃…気付いてあげられなくてゴメンよう…あうあう」と気持ち良く（気持ち悪い）涙を垂れ流すことが出来るからです。
斯様にストーリーそのものは類型的ですが、ヒロインを演じる宮崎あおいは圧倒的です。グレートでありムタです。つまり大変に素晴らしい。大学生なのに幼児体型で眼鏡っ子。おまけに不思議ちゃん。そんな三点セットを背負わされた非現実的キャラクターを全身で演じ、生命を吹き込むことに成功しています。比べると共演の玉木宏さんと黒木メイサさんがDAICONに感じられる程に。宮崎あおいが途中退場し、舞台に二人だけが残されると、画面は急速に色褪せ月曜ドラマランドと化してしまいます。この映画を映画たらしめているのは紛れもなく宮崎あおい、そのひとなのです。
しかし死んだ子の歳を数えても仕方のない話です。既に宮崎あおいは失われた存在です。彼女に拘泥することなく、我々は新たなる「宮崎あおい」を求めて旅に出るべきなのです。だから『篤姫』なんて見ない…あんなもの…無用だ！