『(500)日のサマー』

500 Days of Summer
★★★☆☆
自分とは縁もジェンヌゆかりもない、コジャレた映画かと思って敬遠していたのですが、かなり熱い童貞映画でした。倫理的な落とし所もごく真っ当で、軟着陸のススメと言いましょうか。
以下、ネタバレ。
たまたま最近『ボーイズ・オン・ザ・ラン』を読んでいたので引き合いに出すのですが、あの漫画では序盤のヒロインちはるはビッチもビッチ、理解できないもの、暗黒神ヨグ=ソトースとして片付けられてしまいます。でもこの映画はそうではない。サマーはビッチではないし、むしろ彼女に自分の身勝手な理想像を押し付けてしまう童貞男子側の問題、幼さをホロ苦く描いて自省を促されます。

トム君が公園でサマーと再会する場面が良いです。今までの仕事を辞めて、遣りたい事へ向けて走り始めた(筈の)トム君。ちったあ成長しているのかと思えば、サマーを詰問してしまう相変わらずの無様っぷり。ヒィイイイ…許して下さいオイラが悪かったんですぅ…と画面から目を背けたくなります。それでも、別れ際ではトム君もサマーを祝福し、未来に幸あれと告げることに成功します。ここグッときます。童貞がヤセ我慢してカッコつける瞬間があると、無条件に支持したくなるのです。

と、映画自体は楽しませて頂いたのですが。インターネッツ上で「サマー分かるわぁ。わたしも同じなのよねぇ」的な感想を読むと、僕様ちゃんの中のミソジニー、童貞ダークナイトがムクムクと湧き上がってきて…ちょっとマタンゴと言いたくなります。トム君の頭がお花畑なのは認めますが、サマーも十二分に問題ありますよ…。

例えばバーでの遣り取り。あの場でのトム君の行動は、そんなに唾棄すべきことなのですか…と思うのです。俺だったら目逸らして遣り過ごすよ…あるいは殴られた挙句に逃げ出すよ!むしろワンパン成功したトム君なんてデカした!(byフォッカー少佐)てなもんですよ。いやサマーはそういったマチョ気分、「オレがオレのカノジョを守る」という自意識こそ嫌うってことなんでしょうが。これをオイラが「だよねー分かるわー」とは到底言えないです…。

「でもあれなんでしょおおお、そこをサマーの気持ち分かるよねーとか言う方がモテなんでしょおおお!」と居酒屋で吠えたところ、友人(既婚者)に「そんなことだけじゃモテませんよ。つうか映画どうこうでモテたりとかないです」と返されシュンとなりました。そうですよね…いちばん爆破したいのは自分自身だ…うぐぅ